末期がんの急変 ある患者さんのお話し

『末期がんはいつ急変してもおかしくない。。。』

そんな事を経験してしまう出来事がありました。

この時の入院で同室になったある患者さんのお話しです。

ある日、4人部屋で1つ空いていたベッドに新しい患者さんが入って来ました。

70歳前後のご夫婦のようでした。その方は私と同じ窓際のベッドで付き添いのおばあさんが入院に必要な身の回りの整理をしていました。

看護師さんは病棟内の説明はほとんどしていなかったのできっと、何度か入院経験がある方なのだろうと思いました。

それからしばらく私はテレビを観たり、外を眺めたりしていました。

数時間経った後、おばあさんの声が聞こえて来ました。

「私は歩くのが大変だからなかなかお見舞いに来れないけど頑張ってね。」

そう言っておばあさんは帰って行きました。


その後2回位、おじいさんの身の回りの物を持ってお見舞いに来られたのを覚えています。

おばあさんが病院までお見舞いに来るには何回かバスを乗り継いで来られていたようでした。

ご主人は肺がんを患っていました。

この方も私と同じように良く窓から外を眺めていました。

私が喫煙所へ行ってタバコを吸って戻って来てもまだ外を眺めていたりする事が多くありました。見ている方向は私が山菜取りに良く出かけるみかぼ山の方向でした。

病室から見えるみかぼ山|肝臓がん末期闘病記


ある日私はその方に話しかけてみました。

いつも見ている方向には、ご自宅があるそうで、今現在、そのご自宅はおばあさんおひとりとの事。子供さん達はそれぞれ独立をしていて家を出ているそうで、普段はおばあさんと二人で暮らしていると言う話しをしてくれました。

「子供達はいつでも来いよ。と言ってくれてはいるけどなかなかねぇ・・・。」

病気のために我が家に年老いたおばあさん一人を残し、ここに居ると言う事は本当に心配だろうし私には分からないいろいろな思いがあるのだろうと見に詰まる思いがしました。


その他、キノコ狩りの話しもしました。

この方が住んでいる家の近くの山林では数種類のキノコが採れると言っていました。

ワカサギ釣りの話しもしました。

近くの湖で良く釣れると言っていました。

この方と話しをしながら、兄の事を思い出したり、退院したら久し振りにワカサギ釣りにも行ってみようと思う程楽しく話しをさせてもらった覚えがあります。


その方が入院してから2週間くらい経ったある朝の事でした。

私はいつものように朝4時頃、目が覚めました。

私の日課は朝、顔を洗ってから喫煙所へ行き、コーヒーを飲みながら一服。

新聞配達の人から直接新聞を買い、朝のひと時を過ごす事でした。朝の楽しみのひとつでもありました。


病院の1階の喫煙所|肝臓がん末期闘病記


この日もいつものように喫煙所へ行くために病室を出ようとしていた時、この方がちょっと咳込んでいるのが分かりました。

この方は肺がんなので、普段から喉にタンが絡みそうな感じがありましたし、急を要するような激しい咳込み方ではありませんでしたので私はいつものように静かに病室を出ました。

『朝のひと時』を過ごし、病室に戻ろうと廊下を歩いていた時です。

当直の2人の看護師さんがベッドを押しながら歩いているところに出会いました。

私は何気なくベッドに乗せられている方の顔を見ました。

その方でした。

私は看護師さん達に「どこへ連れて行くの?」と聞きました。

2人の看護師さんは顔を見合わせ困ったような様子でした。

私はハッと思い、もう一度その方の顔を見てみました。


「ああ・・・。」


亡くなっていました。私は複雑な思いで病室に戻りました。

4人部屋の病室には他に2人の患者さんがいましたが何事も無かったかのようにまだ眠っているようでした。

私は落ち着かず、またそのまま1階に降りました。

末期がんが怖いと言う事は十分に分かっていたつもりでしたが、まさかここまで『急変』するとは本当に驚いてしまい、また、やるせない気持ちでいっぱいになってしまいました。

『昨日まであんなに元気そうだったのに・・・。』


今頃、おばあさんには病院から訃報の連絡が入っているのだろうか。

おばあさんは大丈夫だろうか。。。

おじいさんはおばあさんの住んでいる方向を良く眺めていました。
離れていても心はいつも繋がっている・・・、そんな感じの夫婦でした。

おばあさんの気持ちを考えるといたたまれない気持ちになってしまいました。

しばらくして病室に戻ってみると既に次のベッドが用意されていました。


私は今でもおばあさんの事をふと思い出す事があります。。。
『なかなか行けないねぇ。』と言っていた子供夫婦の所に行って孫達に囲まれ楽しく過ごしている事を願って止みません。。。





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