主治医の『本音』、そして兄へ感謝

私が主治医にお礼を言った後、主治医は私を見つめ、少し真剣な顔で言いました。


「笹野さん、本当に良かった。僕も笹野さんのように大変な病を乗り越えられて元気になられた患者さんを見ると本当に嬉しく思います。
しかし現実は難しい。
僕達も日々一生懸命頑張っていろいろ考えながら治療をしていても報われない方のほうが多いですからね。」


この言葉は主治医の本音だと思いました。

私は1年半と言う長い闘病生活の間、患者として病院内でのいろいろな出来事、そして同じ病の患者さんの死を何度となく目の当たりにして来ました。

そんな私にだからこそ、主治医は医師としての本音を言葉にして出してくれたのだと思います。


「笹野さん、今後はどのようにしますか?」

「もし可能であれば3ヶ月に1度のペースで血液検査を受けて様子を見て行きたいと思っています。」

「分かりました。そのようにして様子を見て行きましょう。」


こうして診察は終わりました。

私は会計を済ませて、久し振りに『いつもの場所』で缶コーヒーを買い、一服しました。

家で結果を待っている妻にも電話をしました。

「腫瘍マーカーの数値は基準値内だったよ。癌も今のところ心配はないって。」

「そう!良かったね!本当に良かった。これで私も本当に安心したよ。帰ってきたらいろいろ話そうね。
子供達も待ってるからすぐ電話してみるね、電話切るけど気を付けて帰って来てね。」


私は電話を切った後、コーヒーを飲みながら病院での闘病生活を思い出していました。

私が最後に退院した3ヶ月前に良く見かけた顔見知りの方々とは全く会えませんでした。

場所が場所だけに、どうしているのかと気になりましたが皆さんの名前も分からない状態でしたのでどうする事も出来ませんでした。


『医学会において例が無い』


不治の病と言われる「末期がん」に対して、西洋医学を学んで医療現場で数多く治療を行っている医師の方々でも私のような「末期ガン」を乗り越えた患者には出会った事が無いと言う事なのでしょうか。

仮にもしそうだとしたら、私は迷走状態の末、とてつもない事を成し遂げてしまったのかも知れないと思いました。


それもこれも兄のおかげだと私は思っています。

兄が身を持って私に教えてくれたからだと思っています。

兄が胃ガンの末期でこの世を去り、私はそれから癌についていろいろと学ぶようになりました。

私はこの広い世の中には自分の身体に合った良いものが必ずあると考えています。

そう考えて、探し続けた事が、末期がんを乗り越えるひとつの大きな原動力になったのだと思っています。




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